きもの文化ノート 本文4-1
きもの文化について自分の参考資料として私見を書いています。本文は順不同に、内容を膨らませながら書いています。参照される方はご了承の上、ご覧ください。なお、無断でのコピーや転載はご遠慮ください。追記・修正箇所は太字・下線にしています。
第4章 糸の種類
第1節 絹
1 蚕
絹糸は蚕の繭から作られます。蚕の餌は桑の葉です。孵化した蚕は休眠・脱皮を4回繰り返し1ヶ月で5齢の熟蚕になります。蚕は体内でセリシン蛋白とフィブロイン蛋白を作ります。孵化してから20から24日程度で糸を吐き始めて自分を包むように繭を作ります。蚕が繭を作る際、絹のたんぱく質を合成・分泌する分泌腺を絹糸腺(けんしせん)といいます。中部絹糸腺でセリシンを、後部絹糸腺でフィブロインを合成します。蛾になると交尾して約500粒の卵を産みます。
平均的な白生地1反(13m)を製織するのにおよそ桑葉100kg、蚕3000頭、2800粒の繭が必要です。繭の糸長は1100~1400mあります。
飼育されている蚕は「家蚕」で他に「野蚕(天蚕)」があります。家蚕は室内で飼育され、野蚕は野外でクヌギなどを食べて育ちます。日本の在来品種である小石丸は皇室で養蚕されています。
繭の生産量(平成26年度)が多い都道府県は、上位より群馬県、福島県、栃木県、埼玉県となります。
2 生糸のできるまで
繭から生糸として出荷するまでの全工程を総称して製糸といいます。
製糸工場での製糸の工程は、乾繭、貯繭、選繭、煮繭、繰糸、揚返し、束装を行い、生糸として出荷します。
繭を湯に入れてほぐれやすくし、操糸機で糸口から糸を引き出します。
複数の繭から糸を取り出し、生糸(きいと)にすることを「繰糸」(そうし)といいます。
太さ(繊度)の単位はデニールで表し、9000mの重さのグラム数にあたります。現在、主に作られている太さは21~32デニールです。生糸は天然繊維で太さが厳密には均一ではないため、太さのだいたいの中間を示す単位に中(なか)も使われます。25中はおおよそ糸の太さが25デニールであることを表します。
3 生糸
繊維の鑑別方法の中に燃焼によるものがありますが、絹を燃焼させると毛髪が燃えるような臭いがして、黒色の灰が残ります。
絹の特徴として保温性、吸湿性・放湿性に優れていて、光沢があります。軽く柔らかく滑らかな風合いを持ちます。
天然素材で唯一、絹だけが長繊維糸で、繰糸工程を経ています。紡績は短い繊維を集めて糸にする工程で、出来た糸は短繊維糸と呼ばれています。
4 玉糸
2頭の蚕が作った玉繭から、座繰りで作る糸です。座繰り糸ともいいます。
5 野蚕糸
野生の蚕を「野蚕」といいます。「天蚕」は代表的な野蚕です。
6 紬糸
蚕の繭は煮て柔らかくし、中のさなぎを取り除きます。湯の中で袋状に広げて作った袋真綿を引き伸ばして、指先で糸を引き出し、細長い糸状にします。糸の太さは均一ではなく、太い部分と細い部分があります。その中でも手工的に引き出される糸を手紬糸と呼びます。真綿糸ともいいます。
7 絹紡糸
繭から取り出される糸のうち生糸には不向きな残糸や、良質な生糸がとれない繭の糸などを紡績して作られた絹糸です。
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